ヒラスズキゲームの真実

ヒラスズキゲームの真実

商品開発に役立てるため、毎年恒例になっているプロアングラー鈴木斉氏とmazumeスタッフとの釣行。毎回オフショアと磯の二本立てで予定を組んでいるが、今回のメインターゲットはヒラマサである。そのため、オフショアチャーター船の利一に終日乗る予定であった。

しかし、前日に北寄りの風が強く吹き、冷たい雨が降った。この風は厄介で、下対馬の厳原では北西となり、東側に位置する厳原港から出港して最南端の岬を超えようとすると西風の影響をモロに受けてしまう。さらに、この北風が吹くと白っぽい濁りが入ってきて、それがなかなかとれないという。オフショアの釣りに適した状況ではない。そこで今回、オフショアの釣りは3日目以降にして、磯からヒラスズキを狙うことにした。

昼に対馬空港に到着した我々は、1時間30分をかけて上対馬へ走るか、もしくは明日の釣りに備えるために、拠点としている下対馬厳原の西側にあるポイントを見るか、という選択を強いられた。ただ、いずれも潮位が高い状態(16時41分満潮)なので、期待が薄い。ヒラスズキの釣りでは、沖に近いところもポイントになる潮位の低い時間帯がいい。

「ムダに体力を使うよりも、今日は下対馬で行ったことがないポイントをチェックしてみましょう」と鈴木氏が言う。

 ポイントはグーグルアースを見て鈴木氏が決める。

 到着した場所は小さな川が流れ込んでいる関係で、濁りが入っていた。それを見て「ここはダメですね」と鈴木氏が呟く。しかし、日没までわずかで、ポイントを移動する時間がないので、ここをチェックする。気配がない。二手に分かれて探ったがノーチェイスだった。こうして初日を終えた。


大人数での釣りでは濡れたギアを車内で収納するためにウェーディングカーゴがあると非常に便利。今回、レンタカーは日産セレナだったが、カーゴが横にふたつ入った。

 2日目は上対馬に移動するか、下対馬で釣るかの選択。だが、この日も北の風が強く、上対馬では釣りにならないことも考えられる。上対馬に移動してダメだった場合、下対馬に戻っても時合を逃してしまう。

鈴木氏のヨミは、昨日チェックした下対馬の河口に絡むポイントは雨による濁りが入っていてダメだが、海水温は暖かくヒラスズキを釣るのにはいい(適水温は16~23℃)。季節の進行が遅い上対馬に行くと海水温が低くなるので、それならば下対馬で潮色がいいところで釣るのが得策、という判断だった。

 潮位が下がる7時ぐらいを目安にポイントを目指す(干潮は11時49分)。サラシがあり、潮色もいい。だが、鈴木氏はそこから北側の沖に目をやり、ナブラがあることを発見し、すぐにその場所へ移動することにした。現場に着いたら、まず潮位は? サラシはあるのか? そして潮色、海水温は? ベイトの気配はあるのか? 沖の状況は? とチェックする。気配がなければムダに時間を使わず、移動するのが鈴木氏のスタイルだ。

 移動したポイントは沖にナブラがあり、磯近くには小魚の群があった。

 結果、このポイントでヒットが続き、すべてのポイントを撃ち尽くしたのちに、最初に入ろうとしたポイントに移動し、ここでも連続ヒット。上対馬に行っていたら、これほどの釣果を得ることはできなかっただろう。この判断は、エキスパートである鈴木氏だからこそできたものだ。昨年の4人連続ヒットに続き、今年も鈴木氏の好判断でヒラスズキの釣りを堪能することができたのである。

ロッドを折ってしまうという災難があったものの、どんな釣りをやっても釣果を上げるスタッフの出口。バスやオフショアの釣りを得意とするが、今回はヒラスズキに初挑戦し、ヒラスズキをキャッチ!

【今回の鈴木氏のレクチャー】

ヒラスズキを狙うときに重要なこととは…

1.サラシにルアーを通すタイミング。

2.使うルアーの潜行深度。

3.リトリーブスピード。

4.ルアーのサイズ。

サラシは濃度によって狙い方が異なる。

サラシは溶存酸素が多いため、ベイトが集まりやすい。それと、サラシは非常に憶病なヒラスズキの警戒心解くものであり、サラシがなく着水点から常にルアーが見えている状態では、なかなかヒットしない。基本はルアーがサラシの煙幕に包まれた状態から、ヒラスズキの視界に入るようにする。

重要なことは、サラシが薄いところでは、魚の警戒心をとくために濃いところを狙う。逆に、上の写真のようにサラシが濃いエリアでは、ルアーが魚に見える薄いところを狙う。あくまでもルアーを気付かせることを最優先するのだ。

ヒラスズキが好むところは、干潮になってもある程度の水深があるところが多い。こういったポイントは、潮位が上がってサラシが強いとルアーが見えなくなる。その対処法としては、サラシが弱まったタイミングでルアーを通す。また、サラシを突き破る潜行深度があるルアーを使う。またはウォブリングが大きく、波動が強いルアーにする。潮位が下がってから狙う、など。

タフなときは、“ヒラスズキとメバルは同じ”と考えると釣果が上がる

「私の考え方は、高活性時のヒラスズキはいい場所を探して、テンポよく釣っていくのが効率的ですが、タフなときにはアプローチを変えます。イメージ的には、タフなときのヒラスズキはメバルに似ていると考えるといいでしょう。行動も沖からシャローに入って、潮位が下がってきたときに、根回りやブレイクなど捕食しやすい場所にいます。ルアーを長い距離追ってきて、よく見て、何かが違うと食わない。狙い方に繊細さが必要です」鈴木氏は言う。

まず、ルアーはヒラスズキが捕食するテリトリーに到達しなければならない。特に水深があってサラシが濃い時には、これが非常に難しい。基本的な考えとして、ヒラスズキは沈み根や磯のスリット、ブレイクなど、身を隠せる場所にいる。そこで目線の上を通ったベイトを捕食しているのだ。

活性が低いときには、ルアーとヒラスズキとの距離が遠い場合、口を使わない。そういったときには潜行深度の浅いルアーは追わない。

よく釣るアングラーは水中の地形をイメージして、ルアーの潜行深度を把握し、根ガカリをさせずに攻めている。ちなみに、鈴木氏は前回に続き、今回もルアーロストなし!

鈴木氏は同じ番手のリールでも、ギア比を使い分けている。

通常はテンポのいい釣りを心がけるため、エキストラハイギアを使う。だがプレッシャーが高く、ジラさないと口を使わない状況では、ギア比を下げてスローリトリーブでも泳ぐルアーを使う。同じロッドを使ってリールのギア比だけを変える理由は、ハンドルを回すリズムを同じにして、ルアーが泳ぐスピードを変えたいから。体に刻み込んだリーリングスピードで釣りをすることによって、潮の動きやルアーの後ろに魚が着いた、などの違和感を得やすくしているのだ。

ヒラスズキは意外に小さいベイトを食べている。

キビナゴや小さなイワシ(カタクチイワシ)など、ヒラスズキは体格のわりに小さなベイトを食べていることが多い。だから大きなルアーを投げ続ければいいわけではない。ただ、風が強い日はある程度のウエイトがないと正確なキャストができず、遠くのポイントを狙うためにはウエイトが必要。

また、根に持っていかれないようにロッドのパワーで浮かせる必要があるため、フックは軸が太い伸びないタイプにしておく。そのため、ルアーは太軸にするとバランスを崩してしまう小さなルアーは使えない。

鈴木氏の場合はビッグサイズのヒラスズキに狙いを絞ったときには、トリプルフックがボディの3カ所に付いたものは浅く掛かることが多く、フックが伸ばされることがあるので、しっかりと刺さってパワーファイトができる2フックのルアーを使う。

ルアーのアクションはヒラスズキが高活性のときはウォブリング系、低活性のときにはローリング系。超低活性のときにはスローリトリーブでもローリングするタイプを使う。

今回のウェットスタイルの装備。

ウェットスーツ3点セット Mサイズ

ラッシュガード 長袖 Lサイズ

フェルトスパイクシューズ Lサイズ(鈴木氏は通常26.5cmの靴を履いている)

レッドムーンウェーディングショートジャケット(試作品) Lサイズ

レッドムーンライフジャケット・ロックショアスペシャル ブラック

ワークキャップII アーミーグリーン

キャスティンググローブ ブラック Mサイズ

フォーカスワンプラス レッド

対馬で使用したのはフェルトスパイクシューズ。一般的な磯ではフェルトスパイクのフェルトがクッションになって着地したときの衝撃をやわらげる。それによって長距離歩くのがラクだ。玉石が多いところは、フェルトの方が接地している部分が広いので滑りにくい。

スパイクシューズは、海藻が繁茂しているところや、房総方面に多い凝灰岩の磯を歩くときに使う。タングステンピンのひとつでも引っ掛かれば、体を保持できるというのがメリット。

磯を歩くときにはグローブが必須。ゴツゴツした岩を素手で掴むと簡単に切り傷となる。転倒の際にも素手は非常に危険。

バラシを防げば、釣果は飛躍的に伸びる!

基本は波を使って、魚を寄せて磯に上げる。

ヒラスズキの釣りはバラシが多い。そのほとんどは、アゴの力が強いので、激しくジャンプをして首を振ったときにフックが外れる。また、フックが伸ばされる。さらに、根際で掛けると、根ズレによるラインブレイクが起こる。

基本的には、ファイト時間が長いとフックが刺さった部分の穴が広がり、首を振ったときにスッポ抜けることが増える。

そのため、ファイトはロッドのパワーを使って魚を浮かせ、速やかにキャッチする。キャッチの際には、いきなりフィッシュグリップで口を掴もうとすると、ラインテンションが緩んだときに首を振られてルアーがはずれる。上げる波を使って魚を磯にズリ上げ、リーダーを掴んで逃げない場所に移動させてから、あせらずにフィッシュグリップで掴むのがいい。

1.ヒット後は根の位置を頭に入れながら、根ズレしないようにロッドのパワーを使って魚を浮かせる。ここでタックルに少しでも不安材料があるとパワーファイトができない。

2.磯の低いところを探して(キャストする前に、ランディングする場所を決めておく)、魚を誘導する。

3.上げる波を使って魚を磯に上げ、さらに引き波で魚が海に戻らない位置まで誘導する。

4.魚が逃げない場所に持っていき、落ち着いてフィッシュグリップで魚の下アゴを掴む。

5.その場でリリースすると場が荒れてヒットが続かないので、安全な場所に移動して写真撮影&リリース。

スタッフの出口が使っている防水ケースは、ウォータープルーフモバイルケースII。本体のみのiPhone7plus、8plusをケースから出さずに操作できる。背面はレンズ部分が透明になっているので、写真撮影も可能だ。

今回、mazumeのスタッフは全員複数匹のヒラスズキをキャッチしたが、本当のことを言うと、バラシの数はその倍近くあった。そのほとんどが、上にあげた理由。

次の研修の課題は、バラさないランディングということで決まり!

今回、すべてのヒラスズキをリリースした。

濡れたウェットスーツを着た状態で車移動するときには、PUシートカバーがあると便利。使用時、収納袋は小物入れになる。